映画「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 ―永遠と自動式人形―」を見た感想・考察・分析

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はじめに

「幸せを運ぶ仕事」

これは今作の劇中に登場する人物の言葉ですが、

その仕事に携わる人、そしてそんな彼らと関わる人たちの物語というのが他でもない、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」なのです。

そして、今回――外伝である「永遠と自動式人形」。

一言で表すと、

「出会いと別れ、そして再会の物語」

であると僕は思います。

文字にすると酷く簡素で簡単で、軽い印象だって抱きかねない気もします。

けれども上記の一言は、日常を過ごしている僕たちでも、きっと体験したことのある、そんな普遍的な出来事だとも思います。

だからこそ、この映画はたくさんの人に受け入れられるような、

誰にでもある」ことだけれど、でもそれは間違いなく「あなただけの」思い出、記憶であるということを改めて気付かせてくれるような、そんな温かさで満ち溢れた作品なのです。

もしあなたが今、再会を願っている――または願ってやまない人物がいて、けれど一歩踏み出せないという状況、あるいは、「今頃どうしているんだろう」と、昔に出会った人へ思いを馳せることが度々あるようであれば、この映画はきっと、その大切な人に、あなたがもう一度会うための勇気をくれるきっかけになるかもしれません。

物理的な障害なんてどうにでもなります。 その人との距離を決めるのは、会いたいという意志の強さに他ならないのです。

まずは手始めといいますか、

ヴァイオレットたちを見習って、手紙なんか書いてみても、いいかもしれませんね。

もちろん、LINEもOKでしょう。

※ここから下はネタばれを含みますよ……!

この映画は大きく分けて、第一部・第二部と分かれています。

  • ヴァイオレットとイザベラの二人で物語が進行していく第一部。
  • テイラーが配達人になるべくヴァイオレットを訪れるところから始まる第二部。

個人的に、特に第一部の作りがとても巧妙で繊細だと感じます。

第一部について

イザベラというキャラクターは、最初は「反抗的な性格であり、上流階級の作法になじめないお嬢様」という、割と他作品で見かけるようなタイプに見えるわけです。

初対面のヴァイオレットに向かっての態度であったり、何でも完璧にこなすヴァイオレットに対して「自分がみじめに感じる」といった旨の発言をするところから、そういった劣等感を抱えたまま育ったせいで反抗的な性格になったのかな……とさえ読み取ることもできます。

貴族特有の閉鎖的な雰囲気や空間から、ヴァイオレットとの出会いを経たことで、イザベラが飛びだして自由になる(親と手紙で云々あって的な)話なのでは……? と、安直に想像することもできるわけです。

が。

しかし話が進むと、どうもイザベラというキャラクターの印象が崩れてくる。

ヴァイオレットに対して徐々に心を開いていくわけですが、会話の中に貴族であるが故の苦労話や悩みが一切出て来ない。それどころか、そもそも貴族の話をまるでしない。

そりゃそうだよ。

だってイザベラ、もともと貴族じゃないんだもん。

さらに言えば孤児で、大層貧しい暮らしを送っていたわけで。

そんな生活の中で出会った捨て子、「テイラー」を妹として迎えて、貧乏ながらも楽しい二人暮らしをしていたと。

けれどもまあ複雑な事情があって、イザベラはテイラーのために、お互い離れ離れになるという選択肢を取った……という経緯があるわけです。

では逆にどんな話をしていたかと言えば、「会いたい人がいるんじゃないのか?」という話と、妹の話。どちらもヴァイオレットと打ち解ける前の会話であり、上記の背景を匂わす言葉というのが、つい口から漏れてしまっている

ヴァイオレットが自分を孤児であるとカミングアウトした時、きっと凄まじい親近感を抱いたと思います。むしろこの発言が無かったら、きっと二人の距離が縮まる速度はもっと遅かったのではないでしょうか。

そこから、イザベラとヴァイオレットは友達として接するようになるわけです。

僕がすごいと思ったところは、この二人が「友達」になるまでの流れがとても綺麗であり、繊細であり、かつリアリティがあるところで、というのも、大人から子供まで――どんな人でも分かりやすいエンターテイメント作品の多いアニメーション映画として見ると、かなり珍しい作り方だと言えるからです。

大抵の場合、キャラクターの心情は台詞というはっきりとした「音」として表に出るわけですが、この映画に関してはそうではなく、リアルな心理描写を行っている。

それに必要な表情だったり仕草だったりを、アニメーションで表現してしまうところが恐ろしい。流石京都アニメーションと言ったところでしょう。

(今回も京アニの十八番である「髪を結ぶシーン」がありましたし!)

というわけで、別に貴族の閉鎖的なアレコレから抜けだすお話ではないので、結果、ヴァイオレットに心を開いたイザベラは、順調に教養や作法を身につけていきます。

イザベラにとっての悩みは「上流階級に馴染めない」ことではなく、「馴染むことで後戻りできなくなる(ひいてはテイラーと会えなくなる)」ことだったと予想します。

ヴァイオレットとの出会いがこの悩みを解決し、覚悟を決めたイザベラが、最後に手紙を書きたいと申し出るわけです(ここで過去の話をヴァイオレットに打ち明けると)。

(ちなみに、イザベラがヴァイオレットに対して「二人で外の世界へ抜けだそうよ」的な発言をしましたが、その真意について、結論はまだ出てません)

ここまでが、第一部。

正直、これだけでも満足でしたが、なんとテイラーが主人公の第二部が始まるという。

第二部について

第二部は第一部と違って簡単で分かりやすく、イザベラ――いいえ、エイミーからの手紙を受け取ったテイラーが、郵便の配達人となるべく孤児院を抜け出してヴァイオレットの元へ訪れる……という話。

テイラーは子供なので、裏表が無く、結果的にお話もシンプルになっています。もちろんいい意味でシンプル、ということです。

第一部の雰囲気からガラッと変わったことで、非常に安心感のある感情移入しやすいストリーになっているところがポイントではないかと。

第二部に関しては複雑性がないので、大きく語る部分もありません。

なので嬉しかった点と述べることにしますが、金髪のイケメン「ベネディクト」が第二部のもう一人の主人公として活躍させてくれたことが、真面目にガチ目に嬉しかったです。

アニメ本編ではあまり大きく関わってこなかった彼だったので、ここで見せ場を作ってあげたのはマジで最高だった。

ちょこっと反抗的な面もある彼ですが、仕事への誠実さや優しさが今作では全面に出てたと思います。テイラーとタッグを組ませたのは天才の采配

クライマックスのシーンで彼が見せた涙の衝撃たるや否や……何とも形容しがたいですわ。

ちなみに僕も泣きました。映画館で泣くのは久々でしたが、ありゃ泣くよ。

総評・感想

……と、ここまで長々と書き連ねましたが、総評としては「神映画」の一言に尽きます。

アニメ本編の方だと、実は話数によって評価が違ったりするのですが、この映画に関してはぶっちぎりで、躊躇ないなく、迷いなく、胸を張って「最高!」と言えます。

アニメ前半では危なっかしかったヴァイオレットが、今回の映画で頼もしく成長した姿を余すことなく見せてくれました。

そして、現在鋭意制作中であるという完全新作の劇場版では、おそらく彼女の前に新たな障害が立ちはだかるのだと思います。

ここまで来たら、もう完結まで見届けるしかないでしょう。

もちろん純粋に楽しみである、という気持ちなのですが、

それに加えて、ちょっとした使命感みたいなものが、僕には湧いてきたりしています。

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